つい先日まで日本にいました。そして日本に帰る前にマイアミにいました。何気に始めて訪れたマイアミの街で、知ってはいたけれど実際色々感じた事がありました。そして先日こんなツイート(アメリカはやっぱりデカすぎてどこで誰がなにやってるかが把握出来なくなる。お、このフォトグラファーすげー。とか思ってみてたらシカゴ在住や、このアートディレクター素敵!と思ったらボストンだったり。日本では東京一極集中だもんな。クリエイターが"食える"都市の多さが"層"の厚さに比例する。)をしたら凄い回数RTされびっくりしました。っで、今回はクリエイターが"食える"都市の多さは"層の厚さ"に比例するのでは? というお話。

考えてみると私はNYに在住してNYで撮影する事がほとんどですが、仕事をさせてもらうクライアントやアドエージェンシーってほぼNYの外にあります。たまにネットでふと見かけるいいな〜と思うアートディレクターやイラストレーター等のクリエーターは、NYに勿論多くいるがそれと同じ位ロサンジェルスやサンフランシスコ、ボストン、ポートランド等、他にもまだまだ複数のアメリカの都市で見かける事が多い。そしてファッション系フォトグラファーはNY在住が多いのだが、実は広告系フォトグラファーの多くはNYに在住していない。当たり前に考えていたのだが改めて考えてみるととても面白い、と思った。

そして先日仕事で訪れたマイアミ。ここで実感する事がとても沢山あった。まず単純にマイアミには巨大なマーケットが存在する。欧米から春夏シーズンの撮影を行なうために撮影隊が殺到するのである。
特に1〜5月にかけてはもしかすると世界で最も撮影が行なわれる街の一つである。なのでマイアミにはフォトグラファー等を抱えるREP、フォトスタジオ、そして多くのモデルエージェンシーが存在する。モデルはやはり"マイアミ"のマーケットに合ったタイプのモデルがほとんどであるが、クリエイターのREPは中々色んな人間が所属していたりする。その中にはNY,LONDON,PARIS等で相当なキャリアを積んでマイアミにベースおくクリエイター、NYが寒い時期のみマイアミに在住して仕事するクリエイターもいる。マイアミで発行されている雑誌もある。

これは他の多くアメリカの街で、多少の違いはあるがクリエイターが食えるマーケットが"存在"しているのである。例えばオレゴン州ポートランド。この街には巨大スポーツアパレル<NIKE>の本社と、その<NIKE>の多くの広告を手がけるW/K本社が存在する。日本ではあまりピンと来ないであろうがオレゴン州はお世辞にも都会と言えない。どちらかと言うと田舎である。しかしこの田舎から世界中に展開される多くの素晴らしい広告が生まれている。そのためスポーツモデルエージェンシーや多くのクリエイターが存在するようになった。

これらはアメリカが広大な土地だからじゃない? と思う人もいると思いますが、実は国土がそんなに大きくないドイツも似た状況にある。首都のベルリンを筆頭にハンブルグ、ミュンヘン、ディッセルドルフ、フランクフルト。と複数の街でマーケットが存在しそして繋がっている。それだけではなく隣接するヨーロッパ諸国とは国内であるかの様に案件が発生する。国土は大きいが、中国も上海、北京、香港、そして今発展を続けている複数の街もそういったマーケットが存在する街になってもおかしくない。

で、話を最初に戻しますが、ふと日本の事を考えると"東京の一極"であると感じます(日本だけではないですが)。確かに大阪、名古屋、福岡等の大都市にも多少のマーケットは存在するであろうが、日本全国区の活動を考えると東京に出なければならないのが現実であると思います。それってとても寂しいな。と思います。
愛する土地を離れなければ自分の目標をかなえられない。今までであれば「仕方がない」で諦めがつく話ですが、これだけ便利な世の中になった今、東京以外の街に住みながらクリエイターが自分の目標と理想に向かっていける生き方が不可能ではないと思います。

今回の帰国で、今も続く地震や情報が錯綜する放射能問題が理由で東京を離れるクリエイターが続出していると聞きました。それぞれが色んな考え、色んな理由で決断しての事であると思います。今はそんな彼らが移った都市をベースにしながら今まで通りの活動を持続する事は可能な時代だと感じます。勿論、東京に住みながらでしか出来ない事の方が遥かにあるが、可能性が閉じる訳ではない。例えば沖縄にも多くの人が移ったと聞きます。なら多くある沖縄ロケの際彼らを起用すればバジェットも安くなるし東京で制作するクオリティーを守れる。アメリカでのマイアミの様に沖縄が日本のマイアミになれば良い。
沖縄にアジア中からの春夏のロケを誘致し、沖縄がアジアのマイアミになれば良い。これからは自分の好きな場所に住み、且つ自分の目標や夢が叶えられる環境が整っていくのではないでしょうか? それでこそ各地方都市から才能あるクリエイターがもっと生まれ、若者が地元にとどまりながら夢を見、そして元気のいい若者が残った地域は発達するのでは? と思います。

今回のコラムを書いてる最中に私のやっているNYのプロダクション<http://new-production.com/>に、あるヨーロッパの雑誌から関西での撮影案件が入りました。正直言えば私が日本にいれば撮りたい案件。世界中で進む制作費の縮小で現地のクリエイター起用は多くなっていっています。これからもっとこのようなチャンスはゴロゴロ転がってくる。それは日本の場合、東京のような世界的な超巨大都市よりも文化や土地の特徴が色濃くある分撮影のネタが沢山ある地方都市にあると感じます。

クリエイターは英語を使った個人のウェブサイトを持ちましょう。凝らないくてもシンプルで早いさらっとしたウェブでいい。無料のブログでもいい。そしてそれを持つだけではなく外の世界に見せる努力をしましょう。今回のような案件で、地方にチャンスを落とそうとしても良いクリエイターを見つける事が困難なのです。それは私よりも世界中の日本にチャンスを持ってくる外国人にはまず見つけるのは不可能ではないか? と思います。私はクリエイターのようなヤクザな仕事はどこの国のどこの街に住んでも良いと思っています。しかし、その上で"自分を見つけてもらえる努力は地方であればある程、中枢で活動する人間の数倍の努力が必要"だと今回の事で感じました。

そして海外案件に関して言えば有名無名、プロアマ学生、年齢性別経験全く関係ない。センスとポートフォリオのみ重要になります。日本で有名とか海外住んでました等と言われても、残念ながらちょっと海の外出ればだ〜れも知らないのが現実です(中には本当に凄い人も少数だけいますが...)。チャンスは平等にある。東京であろうが地方都市であろうが海外から来る人にしてみればあまり関係のない事です。そんなに外国人さん達は日本の地理に詳しくない<笑>。東京の隣に京都があると思ってる人なんてざらです。だから地方都市! 頑張りましょう! 今はどこでにいても"食える"可能性はあります。地方に住む事で東京の仕事が発生しなくなるならば海外の仕事を請け負える様になれば"食えます。"そういった物が増えていけば増える程、日本のクリエイターの層は上がるのではないでしょうか? 地方は"東京以外で良いクリエイター探せない。"という事にならない様にしなければいけません。

話は少しそれますが、今回の帰国で33歳にもなってオカンにめちゃくちゃ怒られて実家の外へ逃げる様に出て行き、作業せざるを得なくなったのですが、wifiの繋がるカフェを大阪で探すのに苦労しました。日本のような先進国はせめてwifi位どこでも繋がる様にしてくれれば、海外からの人間やその場をベースとしない人間がもっと快適に過ごせるのにな〜? と思いながら鬼の形相のオカンの機嫌が収まるまで、wifiの繋がるそのカフェで色々考えてしまいました。

しかし久しぶりに戻った日本は相変わらず良い国だと思いました。日本に住む人はもっと日本を自慢しても良い。


▲ビーチで逆さまになってるおじさんが僕らが水着ギャルを取ってるすぐそばにいました。



▲マイアミの自然光は欧米からわざわざこの街に集まるのが納得する程美しい。