- 2013.06.28
代表取締役/マネージャー・プロデューサーインタースタジオ 園江 淳
都内からほど近く、天高のある大型スタジオとして定評のあるインタースタジオ。
箱だけでなく、人材育成に力を入れているこのスタジオの魅力を
プロデューサーであり、代表取締役の園江 淳氏に話を聞いた。
インタースタジオの概要から教えてください。
インタースタジオは、スタートして28年が経ちました。もともとはアバコインタースタジオとして鷺沼に建てられたわけですが、95年にアバコの冠を外して、「インタースタジオ」という形で完全独立しました。現在120坪と90坪、68坪、3面のスタジオがあります。
95年当初は、今よりもスチルの仕事がたくさんありました。ここは箱が大きくて、ムービーの撮影も多いですが、当時は日数でも金額的にもスチルの方が多かったです。車もそのまま入るので、メーカーカタログ等の仕事も色々ありました。
東京23区内には、中小の白ホリはありますが、大型車が入れられたり、建て込みもできる白ホリのスタジオは少ないです。
そうですね。やはり土地の値段で変わりますから(笑)。ある程度以上の規模のスタジオは、郊外に出ざるを得ないんでしょうね。
- 一番小さな3スタジオでも68坪ある。3つのスタジオ全て、3面Rホリゾント仕様。
そういう意味では費用対効は大きいですね。
そう思います。坪単価、容積率単価で言うと、インタースタジオはかなり使いやすいスタジオだと思います。
現在、ムービーとスチルの比率はどのような感じですか。
今は、ムービーが65%、スチルが35%です。ただスチルの半分近くはコマーシャルの撮影と連動したタレントさん等のスチル写真が多いです。スチル単体の仕事で言うと、3割を切っているかもしれません。
機材面についてはどうでしょうか。
弊社は照明機材に関しては、かなり充実しています。
ストロボであれば、プロフォトとブロンカラーを揃えていますし、HMIもARRIのライトでラインナップを揃えています。
HMIの12kwとかも置いてありますね。
はい。小さいのは200wもありますよ(笑)。
タングステンに関しては、何百Kw分もありますし、キノフロ(蛍光灯)もあります。うちが自社で持っていないのは、LEDくらいですね(笑)。基本的にライティング関係は、特殊なものを除いて一通り置いてあります。デジタルカメラは一眼レフからフェーズワンまで揃っています。
- ストロボから定常光まで、一般的な照明機材はスタジオ内に完備されている。
郊外と言うと、遠いイメージもありますが、鷺沼は近いですね。
電車ですと、渋谷から急行で18分ですし、車なら川崎インターからすぐです。
郊外型スタジオの立地場所は、埼玉や千葉でもよかったわけですが、企業の宣伝広報、広告会社、制作スタッフは、東京の南から神奈川にかけて住んでいる方が多いんですね。そういうマーケットにも基づいて、田園都市線沿線に建てられています。その後も郊外型スタジオは、横浜方面まで含め、こちらの地域に増えました。
レンタルスタジオにとっては、アシスタントの教育も大切ですね。
うちの場合、決まったカリキュラムは設けていません。仕事柄、高電圧、大電流が必要な照明機材を扱うため、機材マニュアルはあります。ただ「仕事の仕方」という意味では作っていません。
スタジオを使用される顧客が違っても、スチルの場合には「総数4〜5灯でトップ、メイン、バック飛ばし」を作るというのはある程度、定型化されていますよね。しかしムービーの場合、毎回ケースが違うので、再現性のない仕事がほとんどです。
そのためアシスタントにはまず「やってはいけないこと」を覚えさせます。そしてクライアントや制作スタッフに対して、「サービス業」としての意識を学んでもらいます。人としてのね(笑)。
スタジオアシスタントは、"2年生になるとかなり慣れてくる"というのが一般的ですが、うちの場合は、"2年生でやっと自信を持って出せる様になる"という感じです。スチルのスタジオではあまり意識されませんが、大光量でムービーを撮る場合は、全体の電力量の管理等も要求されます。学ばないといけないことは多いかもしれません。
中には水を大量に使うとか、ほんとに色々な撮影があります(笑)。
電気と水は相反しますよね。ストロボややHMIなどは、すごく高い内部電圧になっているわけですが、そういう大電流が流れているスタジオの中で、大量の水を使うのは、ある意味大変危険です。そういう状況の中で、何が危険か、どういう対策をとれば撮りたい絵を撮るためのセッティンングができるのか、経験を積み重ねているからそういう事にもお応えできるわけです。
昔は照明機材とカメラまわりだったものが、デジタルカメラの知識、ソフト、レタッチ、カラーマネージメント、ムービー撮影の編集まで、学ばなければならない事が増えました。
もともとレンタルスタジオは、「フォトグラファーに就くための通過点」という認識の所もありますが、うちの場合は、そのようには捉えていません。映像や写真の業界に興味を持ってきたなら、スタジオ勤務はその入り口であって、どのセクションでもいいから、自分に向いたものを職業として選択してほしいと思っています。 インターの卒業生は、フォトグラファーだけではなく、照明技師だったり、美術やコーディネーターをやっているとか、様々な道に進んでいます。
アシスタントはスチルとムービーの両方の仕事が覚えられますね。
そうなんですよ。CMではクライアントがいて広告代理店がいて、プロダクションがいて、制作スタッフがいて、という流れは、写真の世界では大きな広告でないとあまりないじゃないですか。ムービーの場合はほとんどそうなので、そうすると、先々「どういう風にすればいいんだ」というのが、現場で理解していけるんです。 「自分は代理店のクリエイティブ向きかな」とか。「シズルとか照明とか、特殊な技術職で食べている人もいる」とか...。 自分が撮影やコーディネートする立場になった時にも、そういうセクションを知っているのは強みになりますね。
園江さんは、マネージャー歴は長いのでしょうか。
もともと僕は、この世界には照明技師の助手として入りました。95年以降はマネージャー業に専念していますが、それまでは現場にも入っていました。当時はまだフィルムの方がメインストリームでしたが、撮影がデジタル化して以降、ライトの量、ライティングの質がガラッと変わりましたよね。後処理に頼れる分、ライティングが少し雑になっている気もしますが...。
最近はCM(マス)ではないWebサイトや、駅構内のデジタルサイネージ、店頭まわりなどでムービーが増えました。フォトグラファーが撮影を依頼されるケースも増えています。ムービー撮影の経験がなくても相談に乗って頂けるのですか。
大丈夫です。撮影もどのようなファイル形式で、どのような光で撮ればいいのか、最終的に使われる媒体は何なのか、編集はどうするのか等、最初にご相談頂ければ、色々アドバイスができると思います。
たぶん一番つまずくのは編集と音ですね。映像の動きと音を合わせるのは難しいですから。弊社の場合は、編集プロダクションや録音部等、たくさんお付き合いがあるので、企画に合わせてご紹介もしています。
作家はともかく、依頼を受けて撮影する以上、表現者として様々なツールを使っていかなければなりません。弊社もその環境だけは作ってあげないといけないと思っています。僕自身、現場で育って食べてきているので、人を育てていくのが好きですから(笑)。
金額について教えてください。
うちの場合は、「建て込み日とかの設定がないんです。土・日の割増しもありません。ムービーとスチルも同じ料金でやらせて頂いています。
「ムービーの方が、人数が多くて痛むから」というのは、こちら側の理屈ですよね。使う側にはあまり関係ない話です。そのかわり建て込み日があったとしても、本番撮影日と料金は同じにして、クリアにしています。
今年、改築してリニューアルされたそうですね。
はい。5月の連休明けに、タレントさん用の控え室を増やして5部屋にしました。また元々機材倉庫だったところを、お客様用のロビーにしました(写真参照)。
その分、3スタジオの一部を仕切って、機材室に改装しています。
あと、この3年ほど真夏はすごく暑かったですよね。もともと30Kwの大型エアコンを導入していましたが、あまりにも暑いのと、定常光ライトを大量に使うもので(笑)、さらに30Kwの最新型を増設しました。最新のエアコンはすごく効くし、静かだし、導入コストは1/3だし、進化していますね。今年の夏は特に快適に撮影して頂けると思います(笑)。
これから先の展望をお聞かせ下さい。
今は、静止画と動画の垣根がなくなってきて、仕事をしていく上で、それまで自分の知らなかったフローも繋げていかないといけない時代になってきました。幸いインタースタジオは、スチルもムービーもノウハウが豊富で、横の繋がりもたくさんあるので、うちの利益のためだけではなく、撮影、スタジオ業界のためにできる事は、僕がやっていきたいなと思っています。
現場で働いている(外部も含めて)スタッフが安心して仕事ができるような、これから先も職業として、撮影業界に携わっていけるような、そんな環境を作れるように尽力していきたいです。
インタースタジオ 園江 淳 代表取締役/マネージャー・プロデューサー
1991年 照明・川井実氏に師事。
1992年 アバコ撮影スタジオに従事。
1996年 アバコ撮影スタジオとインタースタジオの分離に伴い、インタースタジオのマネージャーに就任。
2008年 代表取締役社長に就任。
インタースタジオ
http://www.interstudio.co.jp/
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