今回、舞山さんが行う仕事は、ジャズをベースに活躍中のヴォーカリスト/シンガーソングライターSHANTI(シャンティ)さんのCDジャケットの撮影だ。クルーは、舞山さんやSHANTIさんの他、アシスタントが2名に、ヘアメイク、スタイリスト、アートディレクター、マネージャーなど総勢10名ほど。撮影はヨーロッパの雰囲気が感じられる横浜某所のレストランを借りて行われた。舞山さんたちは8時に現地入り。撮影開始は10時から。SHANTIさんのメイクとスタイリングが完成するまで、入念なロケハンが行われた。

  •  今回使用するのは、ハッセルブラッド503CWにフェーズワンP45+という組み合わせ。
  •  左:舞山さんを中心に談笑中のみなさん。今日は海外のようなこの場所で撮影が行われる。
    右:アシスタントをモデルにテスト撮影を行う舞山さん。今日はすべてのライティングを自然光で行うため、実際に撮影を行う時間帯の光の入り方も意識しながらロケハンを進めていく。事前に日の回り方はチェック済み。場所ごとにもっとも自然光が生かせる時間帯を探りながら、撮影を行う場所の順番を決めていく。
  •  左:カラーチャートを使いカラーバランスもきちんと把握する。最終的にはカラーチェッカーパスポートと呼ばれるプラグインソフトを使ってカラーバランスを調整。ここは舞山さんがもっともこだわる部分だ。「カラーバランスは私の中でもっとも重要な要素。とくに階調表現に優れるデジタルバックを使った撮影では、カラーバランスがしっかり整うことで、はじめて自分好みの世界観が表現できると思います」
    右:テスト撮影した写真を確認する舞山さん。この際にはカラーバランスの調整だけでなく、写真全体の方向性もざっくり決めておく。
  •  左:ロケハン中も和やかな雰囲気。舞山さんとアシスタントのおふたり。
    右:ロケハン中、笑顔の舞山さん。

SHANTIさんの準備が整い、いよいよ撮影開始。自然光をメインにバウンス板で光量を補いながら撮影を進めていく。冒頭のインタビューにもあったように、舞山さんは基本的にパソコンを接続しながら撮影は行わない。カードはいっぱいになったら交換し、ある程度撮れた時点でパソコンへ読み込みチェックをする。一枚一枚の写真サイズが決して小さいとは言えないデジタルバックの画像だが、転送速度も速く、撮影にはまったく支障はないようだ。  今回の撮影は、レストランの敷地内主に4カ所で行われた。途中で衣装チェンジし、お昼すぎに撮影は滞りなく終了。総じて、舞山さんの撮影はテンポがいい。「撮影が早いのは、具体的に撮影をはじめる段階で、こんなものを撮ろうというビジュアルがはっきりしているからかもしれません。自分の思い描くビジュアルが撮れるまでは撮り続けますが、迷うことはないんです。それから、中判デジタルはやはり安心感があります。人と同じ写真にならないような気がするというか...、確実に美しい写真が撮れているといった安心感のようなものがあります」

  •  左:SHANTIさんのスタイリングが整い撮影を開始する舞山さん。まずは、自然光がたっぷり入る室内を使って撮影を進めていく。写真では見えていないが左側に白いバウンス板が配置されている。
    右:ひと通り撮影した時点で、パソコンにデータを読み込み写真のチェック。この時点で舞山さんは現像ソフト内でカラーとモノクロの両方の可能性を探っている。
  •  左:次は窓際からやわらかい光の入る部屋に移動して撮影。ちなみに、今回は絞りは開放値、感度はISO100を基準に撮影されている。舞山さんは中判デジタルではISO感度は極力上げないという。つまり感度で明るさは調整しないということだ。もっとも最良のISO感度を設定しておくことで、中判デジタルの能力は発揮される。
    右:衣装を替えて、併設された教会に移動し撮影。ここでは下と右側にバウンス板が配置され、光量を補っている。なお、中判デジタルで撮影する際は、アンダー気味に撮影し、現像時に明るくすると舞山さんは言う。「CCDを採用している中判デジタルでは、一度飛んでしまった階調は取り戻せないんです。なので少しアンダー気味に、ハイライト基準で写真を撮ります」
  •  左:教会のエントランスで撮影。実はこの日は晴天ながら、凍えるような極寒の気候。屋外での撮影は、寒さとの戦いでも。
    右:ラストカットは屋外テーブルを使い、脚立の上からハイアングル気味に撮影。この際の写真が、実際のCDジャケットに使われている。
■SHANTI「Jazz en Rose」(COCB-54050)
今回舞山さんが撮影した写真が使われているCDジャケットがこちら。モノクロームの質感が大変美しい仕上がりになっている。最後のシーンで撮影されたカットの中の一枚だ。

SHANTI Vocalist/Singer-Songwriter
CMの作詞作曲、ナレーション、ライブ活動等でも活躍中。2010年コロムビアより「Born To Sing」でメジャーデビュー。これまで、オリジナルアルバムを3枚、カバーアルバムを今回の作品を含め2枚発表している。欧州ツアーの成功後、オランダでボーカルを録り直したアルバム「Cloud9」は欧州と北米で発売された。「日本プロ音楽賞」にて優秀賞と最優秀賞を連続受賞の経歴を持つ。 http://columbia.jp/shanti

取材協力:
日本コロムビア株式会社
http://columbia.jp/