「1989年 - 2013年 藤井保展」が、MA2 Galleryで開催される。
広告写真の撮影をする一方、作家としての作品も精力的に発表し続けてきた藤井さん。

1989年「南方熊楠」の作品から最新作「霧」まで、24年間の中からギャラリーの視点でセレクトしたものを、この展示のために新たにプリントした。
それぞれの作品と共に、その撮影時に感じた写真家の「想い」も綴られる。
 

ステートメント
藤井保は日本を代表する広告写真家のひとりである。
だれでも、藤井保の写真を見たことがあるのではないだろうか? 私もその一人だった。
藤井作品の中に構図の真ん中に卵がひとつ配置された作品がある。不思議にその卵は、浮き上がっているようにも見えたり、落下しているようにも見えたりする。グレートーンの写真なのに、その卵は真っ白にも、茶色にも見えた。それはまるでこちらの心情を読んでいるかのよう
だった。
私は、藤井の作品にひどく執着するようになり、とうとうギャラリーの陰も形もないまだ構想の段階に、手紙を書き、展覧会のお願いをした。それがほぼ10年前である。その10年の間に藤井のオリジナルプリントに接すれば接するほど、なぜ藤井がフィルム撮影、そして銀
塩写真にこだわるのか理解できるようになった。
撮影時の藤井には、周りの者にも伝わってくる緊張感が漂う。その緊張は、そこにある存在そのもの、あるいは気配を撮るという写真家の覚悟なのかもしれない。
その覚悟は、暗室のなかで印画紙に浮き上がってくるのではないだろうか。
ぜひ、怖いくらいうっそうとした森の気配(ニライカナイ、1997年)や手でかきわけたくなる霧の粒子(2013年)を藤井の銀塩写真の中から感じていただきたい。

MA2 Gallery 松原昌美

展示会風景


ニライカナイ 1997年


BIRD SONG 2007年
 

FOGGY ISLAND 2013年


南方熊楠 1989年


海景 2004年

展示会情報

MA2 Gallery
http://www.ma2gallery.com/

ギャラリー名
MA2 Gallery
住所
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
開館時間
12:00から19:00まで
月・火・祝日休
アクセス
JR恵比寿東口から徒歩10分、日比谷線広尾駅から徒歩10分